はじめに

9月から10月にかけて旬を迎える「さんま」は、塩焼きのイメージが強い魚ですが、新鮮なものは刺身で味わうと、また違ったおいしさを楽しめます。
さんまには、脳の働きをサポートするDHAや、血液をサラサラに保ち、動脈硬化の予防にもつながるEPAといった不飽和脂肪酸のほか、
良質なたんぱく質や、目の疲れ・口内炎の改善に役立つビタミン類鉄分ビタミンB12などの造血作用に関わる栄養素も、豊富に含まれています。
これらの栄養素がバランスよく含まれているさんまは、毎日の健康づくりにぴったりの魚といえます。
特に鉄分不足による疲れやすさや集中力の低下が気になる方にとって、積極的に取り入れたい食材です。
今回は、そんなさんまをよりおいしく、そして健康的に楽しむために、さんまの魅力や栄養素、選び方、調理のポイントなどをご紹介します。

さんまをおいしく食べるために-選び方と調理のポイント-

◆さんまの選び方

さんまをおいしく食べるためには、まず新鮮で脂の乗ったものを選ぶことが大切です。
以下のポイントをチェックして、より良いさんまを見分けましょう。

さんま

●目とお腹をチェック

さんまは目と腹が傷みやすい魚です。新鮮なものは黒目がはっきりとして透明感があり、ふっくらと張りがあります。
逆に、目が白く濁っていたり、赤くなっていたり、陥没しているものは鮮度が落ちている可能性が高いので避けましょう。
また、お腹にハリと弾力があるかどうかも大切なポイントです。お腹が柔らかく弾力がない場合は、内臓の腐敗が進んでいる可能性があります。
見た目でも判断できますが、全体的に丸々と太っていて、頭から背中にかけて盛り上がりがあるものは、脂がしっかりと乗っていて美味しいです。

●下あごと尾ひれの付け根もチェック

さんまの下あごの先端が黄色くなっているものは、新鮮な証拠とされています。
鮮度が落ちてくると、この黄色が茶色っぽく変わってくるため、購入時の目安になります。
さらに、尾ひれの付け根の部分が黄色く色づいているさんまは、脂が乗っていて美味しいと言われています。

●パック詰めの場合の注意点

スーパーなどでパックに入っているさんまを選ぶ際にも、鮮度の見極めが重要です。
特に注意したいのは、肛門が開いているものや、肛門から液体がにじみ出ているもの。これらは内臓が腐敗し始めているサインなので避けましょう。
また、カットされているさんまや開きになっているものは、切断面が空気に触れて酸化が進み、味が落ちやすくなります。
可能であれば、丸ごとのさんまを選ぶのがおすすめです。
水に浸かって売られている場合は、パック内の水が濁っていないかもチェックしましょう。透明な状態が保たれているものが新鮮です。

◆さんまのおいしい食べ方

さんまは消化器官が短く、腹に不純物がたまりにくいため、内臓も含めて安心して食べられる魚です。
最近では流通の進化により、産地以外でも新鮮な刺身用さんまが手に入るようになりました。
刺身は、わさびではなくしょうが醤油で食べるのが一般的です。

●塩焼きのコツと味の楽しみ方

定番の塩焼きも、ちょっとした工夫でプロの味に!

  • 塩は、焼く15分前に振るのがベスト。早すぎると塩辛くなり、遅すぎると臭みが残ります。
  • 酢を少量かけると旨味を閉じ込め、薄めたみりんを塗ると綺麗な焼き色がつきます。
  • 脂の乗りは時期によって違い、9月はあっさり、10月中旬以降は脂がしっかり乗った濃厚な味わいになります。
塩焼き

●焼き方のポイント

炭火で焼く場合は、遠火の強火が基本。炎が直接当たると焦げや焼きムラになるため、脂が落ちないよう傾けて焼くのがコツです。
グリルで焼く際は、受け皿に備長炭などを敷くと、煙や匂いを抑えつつ、下からも熱が入り、焼き上がりが良くなります。

●大根おろしと一緒に

さんまの塩焼きには、大根おろしを添えるのがおすすめです。
大根に含まれる酵素には、脂の消化を助ける働きや、苦味・発がん性物質を抑える効果があり、脂の多いさんまとは非常に相性が良いです。
さらに、すだちやレモンを搾ると、香りと酸味が加わり、味がぐっと引き締まります。
さんまをより健康的に楽しむには、薄味の生姜煮や梅煮にして、煮汁ごと食べるのもおすすめです。
煮汁には、DHAやEPAなどの栄養素が溶け出しているため、栄養を余すことなく摂ることができます。

さんまは、鮮度・焼き方・食べ方にこだわることで、さらにおいしく健康的に楽しめる魚です。
ぜひ秋の食卓に取り入れて、旬の味覚をお楽しみください。
今回はそんな旬のさんまを使ったレシピをご紹介します!

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ここがすごい!-さんまに含まれる栄養素と健康効果-

秋になると食べたくなるさんまは、焼いたときの香ばしい匂いに、つい食欲をそそられますよね。
でも、魅力は「おいしさ」だけではありません。実は、体にうれしい栄養素がたっぷり含まれているんです!
今回は、さんまに多く含まれるDHAやEPAについて、わかりやすくご紹介します。

血液をサラサラにする!DHA・EPAの力

さんまなどの青背の魚には、DHA(ドコサヘキサエン酸)EPA(エイコサペンタエン酸)といった不飽和脂肪酸が豊富に含まれています。
不飽和脂肪酸は常温でも固まりにくいため、体内でも液体のまま。
これが、血液をサラサラにする理由なんです!
n‑3系脂肪酸(DHA・EPAを含む)の1日あたりの目安量は、以下のように定められています。

※日本人の食事摂取基準(2025年版)
年齢 男性(g) 女性(g)
18-29歳 2.0 1.5
30-49歳 2.0 1.7
50-64歳 2.3 1.9
65-74歳 2.6 2.3
75歳以上 2.3 2.0

さんまには、このn‑3系脂肪酸の主成分であるDHAが100gあたり約2.2g(2200mg)も含まれており、非常に効率よく摂取することができます。

さらに、さんまにはEPAも豊富に含まれており、100gあたり約1.5g(1500mg)前後とされています。
DHAとEPAを合わせると、合計で3.7g前後にもなり、1日の目安量を1食でほぼ満たすことも可能です。

文章

中性脂肪を減らし、血管も元気に!

DHAにはさまざまな生活習慣病の予防に役立つ働きがあります。

  • 中性脂肪を減らす
  • HDL(善玉)コレステロールを増やす
  • 血管をしなやかに保つ

これらの働きによって、血流が良くなり、血圧の上昇を抑える効果が期待されます。
結果として、動脈硬化や高血圧などのリスクを減らすのに役立つのです。

元気

③「脳の栄養素」DHAで記憶力もサポート!

DHAは、なんと脳の働きにも深く関わっている栄養素です。
脳には「血液脳関門」というバリアがあり、有害な物質を遮断していますが、DHAはこの関門を通過できる数少ない成分。
DHAは脳の神経細胞を活性化し、記憶力や学習能力の向上をサポートします。
特に成長期のお子さまや、高齢の方の脳の健康維持にも効果が期待されています。
さんまは美味しいのに栄養満点で健康にも良く、まさに秋にぴったりの「旬のスーパーフード」と言えるでしょう。
DHAやEPAは体内で合成することができないため、食事からの摂取がとても大切です。
ぜひ、この秋はさんまを味わいながら、健康づくりにも役立ててみてくださいね。

まとめ

【おいしいさんまの選び方】

  • 目が澄んで黒く、ふっくらとしているものを選びましょう。
  • 下あごや尾の付け根が黄色いものは新鮮で脂がのっています。
  • お腹にハリがあり、全体的に丸々と太っているものが◎。

【保存方法】

  • 購入後はできるだけ早めに調理するのがベスト。
  • 保存する場合は、内臓を取り除きラップで包んで冷蔵、または冷凍保存を。
  • 冷蔵なら1〜2日、冷凍なら2〜3週間が目安です。

【おいしい食べ方】

  • 塩焼きは15分前に塩を振り、遠火の強火で焼くと◎。
  • 脂ののったさんまには、大根おろし+すだちでさっぱりと。
  • しょうが醤油で食べる刺身や、煮汁ごと食べられる梅煮・生姜煮もおすすめ。

【さんまの栄養効果】

  • DHA・EPA:血液をサラサラにし、動脈硬化・高血圧を予防。
  • 鉄・ビタミンB12:造血を助け、貧血や疲れやすさの改善に。
  • ビタミンB群・A・D:目の疲れ、口内炎の予防、免疫力アップに。
  • たんぱく質:筋肉の修復や体力回復をサポート。

参考文献

  • わかさ生活.” 脂ののった秋刀魚の豊富な栄養素”.わかさ生活.リンク(2025-9-3).
  • みなとの野菜大辞典.”サンマ(秋刀魚)”.みなとの野菜大辞典.リンク(2025-9-3).
  • 飯田薫子,寺本あい“一生役立つ きちんとわかる栄養学“. 株式会社西東社.2019,p211
  • 日本人の食事摂取基準(2025年版)“脂質 n-3系脂肪酸 目安量”(厚生労働省:「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書,2024より).リンク(2025-9-10).