♦はじめに

なすは、夏から初秋にかけて旬を迎える、紫色が美しい野菜。炒め物や煮物、揚げ物、漬物など、どんな調理法にも合う食材です。漬物でおなじみの関西の「水なす」や京都の「賀茂なす」など品種もバリエーションも豊かです。
見た目の華やかさだけでなく、高血圧や生活習慣病予防に役立つクロロゲン酸ポリフェノール(ナスニン)を豊富に含む健康野菜でもあります。
今回は、そんななすをより美味しく、健康的に楽しむために、栄養素から調理のポイントなどをご紹介します。
夏バテが気になるこの季節、なすを摂取して元気に乗り超えましょう!

なす

なすをおいしく食べるために -保存方法と調理のポイント-

◆長持ちさせる!保存方法

新鮮なものを選ぶ際は、ヘタの切り口がみずみずしく、皮にハリとツヤがあるものを目安にしましょう。
保存する際は、常温で保存し、2〜3日以内に使い切るのが理想的です。
なお、なすは5℃以下の低温に弱く、冷やしすぎると組織が傷みやすくなるため、
冷蔵庫で保存する場合は、野菜室に入れるか新聞紙などに包んで冷気を直接当てないようにしましょう。

カット

◆おいしい食べ方

なすをおいしく、そして健康的に食べるポイントは、「皮ごと調理」です!
なすの鮮やかな紫色の皮には、抗酸化作用をもつポリフェノールの一種「ナスニン」が豊富に含まれています。
皮をむいてしまうと、せっかくの有効成分が減ってしまうため、ぜひ皮ごと調理するのがおすすめです。

◆油との相性が抜群!

なすは油を吸収しやすいので、炒め物や揚げ物にすると甘みが引き立ち、香ばしさとコクがアップします。
特に、抗酸化作用のあるビタミンEを含む植物油(ごま油・オリーブオイルなど)と一緒に調理すれば、健康効果もさらに高まります。
ただし、油を多く吸収するため、カロリーが気になる方には「蒸す」「焼く」「レンジ加熱」などの調理法もおすすめです。
蒸しなすや焼きなすは、なす本来の味を引き立て、ヘルシーに楽しめます。
今回は、電子レンジで簡単に調理できるレシピをご紹介します。👉「なすの旨辛ごま和え」レシピはこちら🍆

◆アク抜きはほどほどに

なすは切った直後に水にさらすことで、アクが抜け、ポリフェノールの酸化による変色も防げます。
ただし水にさらし過ぎると、ナスニンやクロロゲン酸などの有効成分が水に溶け出してしまうため、短時間で済ませるのがポイントです。

なすのここがすごい! -栄養素と健康効果-

なすは、その多くが水分で構成されており、ビタミンやミネラルといった栄養素は比較的少なめです。
しかし紫色の皮に含まれる「ナスニン」と呼ばれるポリフェノールや、「クロロゲン酸」といった成分が豊富で、これらには生活習慣病の予防効果が期待されます。そんななすには、以下のような健康効果があります。

①夏バテの予防に効果的

なすには体を冷やす作用があり、夏の暑さで起こりがちな「のぼせ」や「ほてり」を鎮める働きがあります。
また、含まれる「コリン」には胃液の分泌を促し、肝臓の機能を高める作用があるため、夏場に起こりがちな食欲不振の改善にも役立ちます。
夏バテ防止のために、毎日の食卓へ積極的に取り入れたい野菜です。

夏バテ

②生活習慣病の予防・改善

なすに含まれるコリンは神経伝達物質である「アセチルコリン」や、細胞膜を作る「レシチン」の原料となります。
アセチルコリンは血管を拡張し、血圧を下げる働きがある一方、レシチンは肝臓への脂肪の蓄積を防ぐことで脂肪肝の予防に役立ちます。
さらに、なすにはカリウムも含まれており、体内の余分な塩分を排出し、血圧の安定を助けます。
これらの成分が相互に作用することで、高血圧や動脈硬化、脂肪肝といった生活習慣病の予防・改善が期待できます。

③がんの予防・抑制効果

ナスニンやクロロゲン酸といったポリフェノールには、強い抗酸化作用があり、体内の活性酸素を抑える働きがあります。
これにより、細胞の老化やがんの発生リスクを抑える効果があると期待されています。
中でもナスニンは、発がん物質の働きを抑制する力が高いとされ、注目を集めています。
さらに、クロロゲン酸が変化してできる「カフェ酸」は、肝臓がんや肝硬変の予防にも有効とされています。

④炎症や痛みをやわらげる

なすに含まれる「プロテアーゼインヒビター」という成分には、炎症や痛みを抑える作用があります。
胃炎や口内炎、関節痛、神経痛、のどの痛みなど、幅広い症状の緩和に役立つと考えられています。
昔ながらの民間療法では、焼いたなすを使った「黒焼き」に蜂蜜を加え、患部に塗布することで、口内炎や歯痛を和らげるとされています。
こうした効果は、なすに含まれる有効成分の働きによるものと考えられます。

まとめ

【美味しいなすを選ぶポイント】

  • ヘタの切り口がみずみずしく、皮にハリとツヤがあるもの
  • 皮の色が濃く、傷やシワ、変色のないもの
  • 手に持ったときに、軽すぎずほどよい弾力があるもの

※なすは低温に弱く、冷やしすぎると傷みやすくなります。新聞紙などに包み、野菜室で保存しましょう。なるべく2〜3日以内に使い切るのがおすすめです。

【なすに含まれる栄養素と期待される健康効果】

  • ナスニン(ポリフェノールの一種):抗酸化作用があり、細胞の老化やがんのリスクを抑える。皮ごと調理することで効果を活かせます。
  • クロロゲン酸:血管や肝臓の健康を守り、高血圧・脂肪肝・動脈硬化の予防に役立つ。
  • コリン:神経伝達や脂肪代謝に関わり、肝機能の向上や血圧を下げる効果が期待されます。
  • カリウム:余分な塩分を排出し、血圧の上昇を抑制。高血圧対策に有効。
  • プロテアーゼインヒビター:炎症や痛みをやわらげ、胃炎や口内炎、歯痛の民間療法で用いられてきた成分。

【おいしく食べるためのポイント】

  • 皮ごと調理が◎:ナスニンなどの有効成分を活かすには皮ごと使うのがおすすめ。
  • 油との相性が抜群:ごま油やオリーブオイルなど、抗酸化作用のある植物油と一緒に調理すると栄養効果アップ。
  • アク抜きは短時間で:水にさらしすぎると栄養素が流れ出るため、手早く行いましょう。

【こんな方におすすめ!】

  • 夏バテ気味で食欲がない方
  • 血圧やコレステロールが気になる方
  • 生活習慣病やがんの予防に関心がある方
  • 胃や口内に炎症・不調がある方

参考文献

  • わかさ生活.”わかさの秘密 なす”.わかさ生活.リンク(2025-6-19).
  • わかさ生活.”わかさの秘密 クロロゲン酸”.わかさ生活.リンク(2025-6-30).
  • わかさ生活.”わかさの秘密 ポリフェノール”.わかさ生活.リンク(2025-7-23).
  • 飯田薫子,寺本あい“一生役立つ きちんとわかる栄養学“. 株式会社西東社.2019,p253